地球上に自生するほとんどの植物は独立自養植物である。
発芽して、生長して、花を咲かせ、種子を稔らせ、翌年も生きるエネルギーを蓄積する・・・
これらの植物の生命継続、子孫の継承に要するエネルギー源は、
ほとんどの植物は自ら行う光合成で作り出す。炭素化合物である。澱粉、糖分、糖質・・・。
光合成に必要な要件である水、光、炭酸ガス、温度の中で、
炭酸ガスは空気に含まれているから争奪戦はない。
温度は同じエリアでは同じ温度に遭遇するから争奪戦はない。
水と光の二つは、獲得戦で負ければ・・・・同じ場所で生きていても、十分生育出来ないことになる。
そういうことで、作物栽培では、果樹では光が葉によく当たるように剪定を行う。
野菜、イネなどでは面積当たりの栽植密度が重要になる。
密に植えると多く収穫できるわけではない。
面積当たりに降り注ぐ太陽の光エネネルギーは定まっているからである。
ラン栽培でも、面積当たりの鉢数が・・・・最適な鉢数が決まっているのはこのためである。
原野、森林・・・では、この太陽光エネルギーと、水条件で、植物の生長量は制約を受ける。
水条件では、豊かな熱帯雨林から砂漠まで幅が出る。
生物が生きるための最低限の水のないエリアでは、全ての生物が生存できない。
死の砂漠である。
こういう自然の法則の中で、人間が作物、植物を栽培すると・・・・
より大きく育てたい、より多く収穫したいという・・・ことが起こる。
戦争でも始めれば、食料は民族の存亡に関る戦略物資となる。
植物と肥料の関係は、人類の歴史では、ほとんど戦争がからんでいる。
近代無機化学肥料の開発は、戦争がもたらしたものである。
同じ面積から、より多くの食物を得るには、肥料を与えれば・・・ということである。
事実、窒素を与えれば、与えない場合より、より多く収穫できるからである。
植物、作物栽培にとって・・・・窒素は肥料は必要不可欠ということになる。
独立自養植物であっても、充分な光合成が行なわれている条件で生きている植物であっても、
窒素を与えれば、より大きく、より早く生長し、収穫が多くなる。
これが作物栽培の常識である。
この常識が生まれたのは約150年前に過ぎない。
ドイツの化学者リービッヒが無機栄養説を発表してからである。
それ以前は、植物は有機物が分解して出来る養分を吸収して生育すると思っていた。
だから、それ以前の農業は、人間、動物の排泄物、植物を土壌に入れていた。
こうすると、より作物は良く育ったからである。
有機栄養説である。
日本でも、1960年代までは・・・・人糞尿を畑に施していた。
腐葉土を作るのに、枯れ落ち葉に人糞尿を加えて醗酵、腐敗させた。
循環型の農業である。
この循環型農業をリービッヒも高く評価していた。
食料の自給自足には、人間の排泄物・・・窒素を多く含んでいる・・・
これを肥料として用いるのが理にかなっているからである。
この人間の排泄物も、最後は微生物によって分解され、
無機のイオン形態で植物に吸収される!
だから・・・無機化学工業で作った無機の化学薬品でも・・・
植物に吸収されるときは全く同じである。
これがリービッヒの無機栄養説である。
化学肥料は・・・この理論から作られ、農業、園芸、林業・・・
植物栽培で世界中で行われている。
この理論がラン栽培でも行われている。
水ゴケ、バーク、軽石などの全然養分の含まない用土で植えて、
肥料を施す栽培である。
菌根植物。
このラン科植物にも、このリービッヒの無機栄養説が導入されて行われて来た。
独立自養植物でも、炭酸ガス、水、光が充分でも、
ある種の元素が不足すると、その生育は阻害されることをリービッヒは発見した。
植物必須元素の発見である。
最少律の発見である。
植物必須元素は下記の16の元素です。
炭素、酸素、水素、窒素、燐酸、カリ、カルシュウム、マグネシュウム、マンガン
硫黄、塩素、鉄、銅、ホウ素、亜鉛、モリブデン
この16の元素が不足すると、生育は阻害される。
又この16の元素の中で一つでも不足すると、この不足した元素の生育になる。
これが最少律の発見である。
この元素の中で最も多く植物に吸収されるのは、
炭素、水素、酸素、窒素、燐酸、カリ、カルシュウムである。
炭素、水素、酸素は炭酸ガスと水から吸収している。
他は土壌、水などからである。
これが独立自養植物の養分吸収である。
光合成+植物必須元素の投与である。
水耕栽培、ハイドロカルチャー可能な植物は、理論で行う栽培である。
植物の組織培養の培地も、この理論から作られる。
ランの無菌培養、メリクロンの培地の基本もこの理論から生まれたものである。
この栽培の中で・・・・・
最も目に見える効果が窒素。
覚醒剤みたいなものである。
一度味を覚えると止めることはほとんど出来ない。
よって、植物=肥料である。
肥料を与えなければ植物は育たない!
しかし山では・・・誰も肥料など与えていない。
しかし・・・・肥料を与えなければ、作落ち、減産・・・・経営破たんである。
この理論が作物栽培の根幹である。
これで、多収穫してきた。
これが花栽培にも導入された。
ランの花を大きく、多く咲かせるには肥料である。
葉の色を緑濃くさせるのは窒素である。
消費者は緑濃い野菜を元気がよいと思っている。
緑濃い苗を良い苗だと思う。
ランでも同じ。
黒いような緑のパフィオもある。
これが危ない。
ほとんど、必ず将来ナンプ病に遭遇することになる。
濃い緑=元気。
よって、ラン用の肥料は、多種多様・・・活性剤まで含めれば数えきれない。
しかし、ほとんど全て、以上の理論からのものである。
菌根植物ということが欠落している。
糖、糖質が欠落したままである。
植物の必須元素。
元素からみれば、まさに、これは真理である。
しかし、植物には菌根植物がある。
ラン科植物には光合成を行なわない腐生ランが存在する。
炭素、水素、酸素の化合物である糖、糖質の調達は光合成からではない。
独立自養植物とは調達の仕方が異なるのである。
あるいは、独立自養植物であっても、光合成からのみ調達しているのではないかも知れない!
SUGOI-neで多くの植物を栽培してみると、そういう疑問が出てくる。
そういうことで、近年、根圏の微生物が研究され始めてきた。
土壌の老朽化による生育不良が世界的に拡がってきたためである。
光の争奪戦の負け組みであるラン科植物では、充分な澱粉は作られ、備蓄されているのだろうか。
こういう疑問が出る。
しかもラン科植物は多年草である。
翌年のエネルギー源を備蓄しなければならないという宿命を持っている。
足りない場合はどうなるか。
生育の遅いラン科植物。
絶種するのは時間の問題である。
更に、自ら光合成を放棄した腐生ラン。
ヒモ生活を決断した腐生ラン。
このDNAを持っているのがラン科植物である。
糖質の獲得手段が独立自養植物と異なるのである!
ラン菌が分解するリグニン、セルロース。
これも最後の最後は炭素、水素、酸素になるが、それにいたる過程の糖、糖質、
これをエネルギー源として利用するラン科植物。
種子が発芽するとき、絶対必要な糖、糖質。
ここに、独立自養植物とラン科植物の決定的な違いがある。
ラン栽培が、独立自養植物栽培と同じにしたとき、どうしても説明がつかない・・・・
株の衰弱、自生地再生不可能・・・・という問題に直面するのは、
ラン菌が枯れ落ち葉、植物死骸おリグニン、セルロースを分解したときに生まれる
低分子の糖が欠落しているからである。
なぜ、地球上の植物の90%近くが枯れ落ち葉の中に自生するのか。
ラン科植物はリービッヒの無機栄養説から出発した「肥料栽培」のみでは、
必ず説明がつかない場面が出てくるのである。
糖の獲得方法が一部異なるからである。
光合成とラン菌が供給するものと二つのルートを持つからである。
このラン菌が削除され、一つの獲得ルートが削除された現在のラン栽培では、
株が衰弱したこの場面で、多くの蘭園が挫折し、経営破たんし、
貴重な株が絶種してきたのである。
植物の進化は多様である。
菌根植物の全貌は未だ解明されていない。
ラン菌の働きも解明されていない。
ラン菌が生息する用土が開発されなかったからである。
宇井清太のラン菌発見。
ラン菌が生息するSUGOI-neの開発。
これで、実際栽培してみると、ラン科植物臣でなく、枯れ落ち葉中に自生する多くの植物が、
素晴らしい生育をすることがわかってきた。
その姿は、肥料を与えたものより、より素晴らしい生育をすることが見られる。
それを大系したのが「ラン菌による炭素循環ラン栽培法」である。
近年、世界中で、無機化学肥料を施した作物栽培で、
土壌疲弊が起こり、連作障害、表土喪失、塩類蓄積で不毛の地化している。
そこには、多収穫を目的とした栽培がある。
自然界の法則である枯れ落ち葉の炭素循環が削除された農業がある。
ラン栽培でも、この農法が取り入れられてきたが、同じことが起こっている。
株の勢いを維持、継続できない。
やがて枯死。
自生地を再生できないまま、乱獲。
輸入業者は商売が成立つが、その株だけ、地球上からランが減少し続ける。
やがて・・・・・。
日本の山々からランが絶種したように、世界の森林、原野から・・・ランが消える日が来る。
更に、熱帯雨林の消滅。
人口増大、食料増産は・・・・ランにとっての悲劇なのである。
現在の技術、用土では、ランの自生地再生は不可能だからである。
SUGOI-neなら再生できる可能性がある。
この意味で、この講座を書いている。
もう、日本国内にある原種の株で充分なのではないか????
SUGOI-neで増殖すれば・・・需要に充分名のではないか????
後は、育種で楽しめば・・・・
これこそラン栽培の王道ではないか!
独立自養植物と肥料
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